建築家・木田智滋からの手紙

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Letter01

「アトリエ」

KIda Tomoji wo shitte kudasai

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アトリエは木場潟湖畔にあります。木場潟は白山連峰を背景にしたとても景色のいいところです。30年程前に自分で設計をして住み続けていますが、窓から望む風景は毎日変化し目を楽しませてもらっています。住み始めた頃の敷地は赤土の地面でしたが、年月を経て今では森の中に住んでいるように木々の緑にあふれた環境です。春の季節になると芽吹き、新緑がきれいで、秋には紅葉が。木々が増えたことでいろんな鳥が飛んできて愛らしい姿や鳴き声で癒されています。そんなアトリエでいつも仕事に励んでいますがゆとりのある建築の設計に反映できればといつも思っています。

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Letter02

「木場潟」

KIda Tomoji wo shitte kudasai

木場潟は一周6.4キロの散歩コースを持った公園です。途中には4つの園地が設けられそれぞれに施設が設けられています。かつて南加賀地方には木場潟のほかに今江潟、柴山潟の3つの潟がありましたが、木場潟だけがそのままに残っています。住み始めた頃は全く整備されていなく、土手をかき分け登ったら潟の姿が見える全くの自然でした。今では散歩コースは舗装され、年間60万人が利用される県民市民に愛される公園になりました。天気の良い日は気分転換に木場潟に足を運んでみてはいかがでしょうか。きっと良い発見ができると思います。ついでにアトリエに足を運んでいただければお茶をご用意いたします。

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Letter03

「写真」

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そんな環境に住んでいますので、ついつい写真を撮りたくなり撮影しています。写真歴は古く学生時代に建築を見てまわることが好きで写真に収めていました。面白いもので皆が同じものを眺めていても撮られたものがそれぞれ異なります。言ってみれば目に入ったものをどのように見たかの違いです。テクニックではありません。散歩がてらにカメラをぶら下げ撮っていますが、足元の小さな雑草に目を奪われ思いがけずの発見をすることがあります。そう思うと写真撮影は発見をする目を養うようなものです。案外日常にも面白いものがありファインダーを覗くと意外なものを発見できるかもしれません。

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Letter04

「ミニチュア
 チェア」

KIda Tomoji wo shitte kudasai

建物が完成し住み始めるころには家具が入ってきます。リビングのソファーやダイニングのテーブルセットなど。インテリアの要素には家具が重要です。かつて巨匠と言われた建築家が建築空間に自身のデザインした家具を置くことが良くありました。それぞれの椅子は特徴がありデザイン的にいいものがあります。そのために家具に関する本などを取りそろえて勉強することが趣味となっています。高じてミニチュアチェアの蒐集も趣味となりました。手元にあるのは50種類くらいですが精巧につくられていて見ていても飽きないものです。置かれた家具を想像して建築設計をするのも楽しいものです。

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Letter05

「コレクション」

KIda Tomoji wo shitte kudasai

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ミニチュアチェアもそうですが、私にはどうも蒐集癖があるようです。日常に使われる骨董物が好きで、蕎麦猪口などを集めています。骨董物には歴史を経てきた時空のロマンを感じ毎日使っています。もう一つは昭和のミニチュアカーです。最初は建築模型の添景に使おうと集めていましたが、車のデザインには建築とは違った美しさを感じ、いつの間にか180台くらいのミニチュアカーが狭いアトリエに並んでいます。もう一つクラシックカメラです。父や知り合いの方から譲ってもらったクラッシックカメラが棚に飾られており、車と同様メカニックな美しさを感じます。これらが身近にあると叡智によって作られたものの美しさは何かと問われているように思います。

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Letter06

「大人の
 修学旅行」

KIda Tomoji wo shitte kudasai

学生時代から建築を見てまわることが好きでした。20代にはスケッチブックとカメラをぶら下げてヨーロッパ旅行を2か月ほどしてきました。最近では大人の修学旅行と銘打って年に2〜4回ほど建築を見て廻っています。実際の建築を見ると写真で見たものとは全く違うものを感じます。空間やスケール。素材感、光の入り方等、身体中で感じ取れるものがあります。それらを見るために事前に予習し、見終わったのちには頭の中で整理してみます。それが引出しとなって設計デザインにつながっていっているようにも思います。やはり体で感じることが大切です。

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Letter07

「北欧デザイン」

KIda Tomoji wo shitte kudasai

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北欧デザインのものが好きです。家具や照明器具等優れたデザインのものが多くあります。私の設計にもそれらを取り入れることがたびたびあります。北陸で設計をしていると北欧の生活文化と似たようなことがあると感じます。特に冬の北陸は天候が悪く夜も長いので室内に閉じこもることが多いようで、北欧も同様です。そのために北欧デザインには室内での過ごし方に工夫がされ良いものが生まれたのだと思います。数年前の冬にデンマークとフィンランドの建築を見て廻りました。光に対する思い入れが上手くデザインされていました。北陸と北欧は人間的にも建築的にもDNAが同じところにあるような気がします。

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Letter08

「音楽」

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最近聴いている音楽はほとんどクラッシック音楽です。中でも多いのはピアノ演奏曲のものです。梯剛之さんというピアノ演奏家がおられます。彼は生後1か月で失明し小学校まで日本で過ごしましたが、その後ウィーンに渡り本格的にピアノを学び数多くの賞を受けて世界中で演奏活動をされています。盲目の演奏家ということで最初は衝撃を受けましたが、何度かリサイタルに足を運んで聴いているうちにそれを超えた素晴らしい演奏家だと理解できました。個性ということを言葉にしますが盲目であることも個性で、それをカバーするために聴力が清まされ、演奏も人一倍努力する。それが本来の個性だと思います。音楽を通じていろんなことを学べます。

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Letter09

「ワイン」

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お酒の中でもワインを飲む機会が多いです。ワインソムリエから教えてもらったのですが、ワインと料理の組み合わせでマリアージュという楽しみ方があるそうです。魚料理には白ワイン。肉料理には赤ワインと言いますが、もっと踏み込んでブドウの品種によって味付けのマリアージュがあるようです。クリームソースにはピノグリ種、コクのあるデミグラスソースにはメルロ種の組み合わせで食事するのが美味しいとされています。またワイングラスも白ワイン用と赤ワイン用があり、飲み口の広さによって味覚が変わるようで、これもブドウ品種によってグラスの形があるようです。こんな大人の愉しみ方が好きです。

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Letter10

「友人」

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アトリエで良くパーティーをします。パーティーには陶芸家や版画家、染色家、音楽家など多彩な人たちが顔を出してくれます。そのような方々と話をするといろいろな面で勉強になります。専門的な話や日常の暮らしの話など。何よりも感じるのはそれらの方々はいつもアンテナを張っていることです。いつも同じものを作っていてはクリエイティブにはなりません。何か新しいものsomething newをいつも求めています。建築設計をしていて思うことは、人の話をよく聞き理解し、それを形にすることです。友人からたくさんの引出しをもらいました。感謝です。

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